インフルエンザの目次
- インフルエンザの概念・症状・普通のかぜ(感冒)との違い・流行時期
- インフルエンザの予防法・ワクチン予防接種
- インフルエンザの治療法・抗ウイルス剤
- インフルエンザにおける妊産婦・授乳婦の問題点・対策
- インフルエンザのお勧めサイト
1)インフルエンザの概念・症状・通常の風邪(感冒)との違い・流行時期
インフルエンザウイルス(A型またはB型)によっておきる呼吸器の病気であり、伝染力が強く、毎年の冬に百万人単位の人が罹患する。感染後1〜2日の潜伏期を経て、38度以上の発熱をもって突然発症する。特徴は初期に頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などの強い全身症状を示し、その後せき、痰などの呼吸器症状が現れて、1週間以内に回復します。高齢者、乳幼児や心肺疾患を持つ患者には呼吸器などの重篤な合併症がもたされ、死亡することがある。
普通のかぜ(感冒)との違い:普通のかぜの多くは、全身症状はあまり見られなく、のどの痛み、鼻汁、くしゃみや咳などの症状が中心で、高熱や重症化は少ない。一方、インフルエンザでは、のどの痛み、鼻汁、咳などの症状も見られますが、突然38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が現れる。
インフルエンザと通常の風邪(感冒)との相違 |
|
インフルエンザ |
普通のかぜ(感冒) |
伝染性(家族的発生) |
大、罹病率20〜40% |
強くない |
発病 |
急 |
徐々 |
優勢症状 |
一般全身症状 |
気道局所症状、主に鼻汁・くしゃみ |
悪寒 |
強い |
弱い |
熱及び熱型 |
高く、しばしば二峰性 |
多くは無熱 |
頭・腰・関節・筋痛 |
強い |
しばしば頭痛だ |
全身倦怠 |
強い |
軽い |
重病感 |
ある |
ない |
鼻汁 |
後続する |
先行、顕著 |
扁桃炎 |
ない、あるいは軽い |
しばしばある |
咳 |
強い |
ない、あるいは軽い |
眼球結膜充血 |
しばしばある |
あっても軽度 |
脈拍数 |
年長児ではしばしば相対的徐脈 |
熱相当 |
白血球減少 |
しばしばある |
あっても軽度 |
経過 |
単純型では短い |
長引き散発する |
流行期間 |
短期で終わる |
やや長引く |
病原 |
インフルエンザウイルス |
主としてライノウイルス、その他 |
経過後免疫 |
あり、3〜4ヶ月は続く |
短期 |
(相沢 昭:小児科診療マニュアル.日本医師会雑誌 第102巻 第10号) |
インフルエンザの流行時期:毎年11月下旬〜12月上旬頃に発生が始まり、翌年の1〜3月頃に増加し、4〜5月にかけて減少するパターンであるが、流行の程度とピークはその年によって異なる。
なお、最近では、インフルエンザ簡易検査キットは市販され、インフルエンザが容易にしかも精確に診断されるようになった。特に
IMMUNO AG1も用いればインフルエンザ感染が早期でも検出可能(当院では常備)。
2)インフルエンザの予防法・ワクチン予防接種
インフルエンザの予防法
- 1)帰宅時の手洗い、うがい 、2)流行前のワクチン接種、3)適度な湿度の保持(加湿器など使用し、十分な湿度(50〜60%)に保つ)、4)十分な休養と栄養摂取、5)
人混みや繁華街への外出を控えること、外出時のマスク着用。
インフルエンザワクチン予防接種
- @インフルエンザワクチンの効果:インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防し、健康被害を最小限にとどめることが期待される。日本の研究では、65歳以上の健常な高齢者では、約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果がある。1歳以上で6歳未満の幼児では発病を阻止する効果は約20〜30%で、1歳未満の乳児では効果不明。また、0〜15歳では1回接種、2回接種それぞれで、発症予防効果は68%と85%、16〜64歳では55%と82%である。
A予防接種法に基づく定期のインフルエンザ予防接種の対象者:1)65歳以上の方 、2)60〜64歳で、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の周りの生活を極度に制限される方 、3) 60〜64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
Bインフルエンザワクチンの接種時期:接種後果2週間程度で効が出現し、有効な期間(防御免疫の持続)は3〜5ヶ月程度と短く、インフルエンザシーズンの1カ月前くらいである11月頃(遅くても12月中旬まで)を中心に接種することが薦められ、、毎年シーズン前に接種を繰り返す必要がある。
Cインフルエンザの予防接種の回数:1)13歳以上 0.5mlを皮下 1回又はおよそ1〜4週間(免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましい)の間隔をおいて2回接種、2)6〜13歳未満 0.3mlを皮下 およそ1〜4週間(免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましい)の間隔をおいて2回、3)1〜6歳未満 0.2mlを皮下、1歳未満 0.1mlを皮下、およそ1〜4週間の間隔をおいて2回、4)65歳以上の高齢者に対しては1回の接種でも効果があり、2回接種による免疫の強化に関する効果(ブースター効果)についての評価は定まっていない。
Dインフルエンザワクチンの接種不適当者:1)明らかな発熱者(37.5℃を超える)、2)重篤な急性疾患罹患者、3)予防接種でアナフィラキシーショックのあったひと、4)その他、不適当な状態にある者(予防接種2日以内に発熱及び全身性発疹等のアレルギーを呈したことがある者並びに過去に免疫不全の診断がされている者)
Eインフルエンザワクチン接種による副反応:比較的頻度が高い副反応としては、接種部位(局所)の発赤・腫脹、発熱、頭痛と全身性の反応としての発熱、頭痛、悪寒、倦怠感などが見られます。まれに、アレルギー反応(発疹、じんましん、発赤と掻痒感)が見られる。
接種局所の発赤、腫脹、疼痛は、接種を受けられた方の10〜20%に起こりますが、2〜3日で消失します。全身性の反応は、接種を受けられた方の5〜10%にみられ、2〜3日で消失します。因果関係は不詳であるが、ギランバレー症候群(GBS)、急性脳症、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、けいれん、肝機能障害、喘息発作、紫斑などが稀に報告されている。
3)インフルエンザの治療法・抗インフルエンザウイルス剤
インフルエンザウイルス薬の種類
抗インフルエンザウイルス薬の効果
- 発症後48時間以内に服用することにより、合併症のないインフルエンザでの罹病期間を1〜2日短縮させ、ウイルス排泄量を減少させる。ハイリスク患者においても、抗菌薬を必要とするような合併症を減少させるが、合併症などの重症化を予防できるかどうかについてはまだ結論は得られていない。効果はインフルエンザの症状が出はじめてからの時間や病状により異なりますので、使用する・しないは医師の判断になります。
インフルエンザ罹患時の外出を控え期間:
- 一般的に、発症後3〜7日間はウイルスを排出し感染力がある。排泄されるウイルス量は解熱とともに減少するが、排出期間の長さには個人差がある。咳などの症状が持続の場合には、マスクをして周囲への配慮が望まれます。
学校保健法では、「解熱した後2日を経過するまで」かつ「発症後5日経過してから」をインフルエンザによる出席停止期間としています(ただし、病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めたときはこの限りではありません)。職場復帰については決まりはないが、上記の基準に準じて判断されている。
4)インフルエンザにおける妊産婦・授乳婦の問題点・対策
- 妊婦のインフルエンワクチン接種:ワクチン接種による副反応報告はなく、妊娠初期に接種しても胎児異常の確率が高くなるデータもなし(国立成育医療研究センターのインフエンザのワクチン・薬情報をご覧ください。)
- 授乳婦のインフルエンザワクチン接種:接種しても支障はありません。
- 母親がインフルエンザ罹患時の注意:手洗いと授乳時のマスク励行が重要である。
- 抗インフルエンザウイルス薬と妊産婦、授乳婦:1)妊娠中の抗ウイルス薬の服用避けるべきである、2)乳汁中に薬剤が移行するので、投薬中の授乳は避ける。
- インフルエンザ罹患時の外出を控え期間:一般的に、発症後3から7日間はウイルスを排出し感染力がある。排泄されるウイルス量は解熱とともに減少するが、排出期間の長さには個人差がある。咳などの症状が持続の場合には、マスクをして周囲への配慮が望まれます。学校保健法では、「解熱した後2日を経過するまで」かつ「発症後5日経過してから」をインフルエンザによる出席停止期間としています(ただし、病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めたときはこの限りではありません)。職場復帰については、決まりはないが、上記の基準に準じて判断されている。
5)お勧めサイト
- 東京都感染症情報センターの「インフルエンザ」は東京都における最新情報が掲載されている。
- 厚生労働省のHP「インフルエンザ」では総合対策やQ&Aが詳しく記載されている。
- 国立成育医療研究センターの「インフエンザのワクチン・薬情報」は妊婦必読のサイトです。